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法律問題の解説

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法律問題の解説

欠陥住宅問題に関する最高裁判決の流れ

最高裁平成9年7月15日判決は、損害賠償請求との相殺後の報酬残債務について、「相殺の意思表示をした日の翌日から履行遅滞による責任を負うものと解するのが相当である」としました。実務的には、相殺後に残代金が残るような事案において、相殺の意思表示を安易にしてしまうと、遅延損害金がその時点から発生してしまうことになるので、相殺の主張は安易にしない方が良いということになります。

最高裁平成14年9月24日判決は、「建築請負の仕事の目的物である建物に重大な瑕疵があるためにこれを立て替えざるを得ない場合には、注文者は、請負人に対し、建物の建て替えに要する費用相当額を損害としてその賠償を請求することができる」としました。この判決が出されるまでは、請負契約の瑕疵担保責任において解除が認められていないこととの関係で、建替費用相当額の損害賠償が認められるかどうかについては争いがありましたが、本判決が積極説をとることにより、消費者保護の判断が示されました。将来的には、民法635条但書の解釈に関連して注目されるところです。

最高裁平成15年10月10日判決は、主観的瑕疵を正面から認めた判決です。原審では、建築基準法上の違反がなかったことから、瑕疵を認めなかったのに対し、本判決では、地震に強い建物を建てるために、約定で特に定められた太さの支柱を使わなかった点について、その主観的瑕疵を認める判断を出しました。

最高裁平成15年11月14日判決は、いわゆる名義貸し(監理放棄)建築士の不法行為責任を容認した裁判例です。従前は、名義貸し建築士の不法行為責任は棄却されていた裁判例が多かったのですが、この本判決においては、建築士による管理の重要性が指摘され、名義貸し、監理放棄に対する不法行為責任を認容しました。

最高裁平成19年7月6日判決は、最高裁が建築瑕疵問題に関する不法行為責任の成立を是認した判決といってよいと思います。原審では不法行為責任を限定的に解釈していたのに対し、最高裁は、建物の建築に携わる設計者、施工者及び工事監理者は、契約関係にない居住者等に対する関係でも、建物の基本的な安全性が欠けることがないように配慮すべき注意義務を負うとしたうえで、居住者等の生命、身体又は財産が侵害された場合には、特段の事情がない限り、瑕疵によって生じた損害について不法行為による損害賠償責任を負うとしました。

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